聞こえない音の効果
人間の可聴周波数は20Hzから20KHzくらいといわれる。
しかし、2008年6月1日朝日新聞の「be on Sunday」の日曜ナントカ学によれば
「なぜ、バリ島の音楽にひかれるのか」
国立科学振興財団理事の大橋力さんが四半世紀以上も前に抱いた疑問だ。バリ島の楽器はガムランだけではない。竹筒を棒で打ち鳴らすテクテカン。これも聞こえない高周波数音を含む。
大橋さんらは住民の協力を得手、テクテカンで伴奏するチャロナランという伝統劇を演じる人の頭に電極をつけて調べた。
劇が始まって1時間ほど、演者は「憑依状態」になり、剣を手に魔女ランダに向かう。
この時、演者の脳波は10Hzほどの周波数のα波が増大した。
快さにかかわる脳の部分が活性化したことを示す。さらに入眠時に出るθ波同時に増加するという特異な状態だった。
劇後の血液検査で快さにかかわる神経伝達物質のドーパミン、脳内麻薬と形容されるβエンドルフィンなどが目立って増えていた。日本では国立精神 神経センター研究所部長の本田学さんらと一緒にこんな実験を試みた。
ガムランを録音し、聞こえる音(可聴音)と聞こえない高周波音に訳、12人に<可聴音>と<可聴音プラス高周波数音>をそれぞれ聞いてもらい、脳活動の様子を陽電子断層撮影装置(PET)などで調べた。
すると<可聴音プラス高周波数音>の方が脳幹や、感情情報にかかわる視床、自律神経やホルモン調節の中枢の視床下部の血流が笛、α波が増大した。
「聞こえていない音にもかかわらず快さや、内分泌や免疫が活性化した」と本田さん。
バリの研究と日本での実験がぴったり重なった。人の脳は聞こえていない音にも反応し、「快」「不快」を感じるらしい。「ハイパーソニック エフェクト」と名付けた現象だ。では、聞こえない音はどこから脳に伝わるのか。両方一緒にイヤホンで聞いても効果はなかった。可聴音をイヤホン、高周波音をスピーカーで聞くと効果が出た。体を遮音材で覆うと効果が下がった。結論は「高周波音は体全体で感じていた」。その仕組みはわかっていない。
ガムランのみならず、筆者は国内で同様の経験をしたことがある。
池上實相寺で倍音浴というクリスタルボールのコンサートである。牧野 持侑(じゅん)という人がやられていた。クリスタルボールは水晶を焼結した大きなもので堅いため、振動させると極めて高い周波数を出す。(あちこちでやられているのでグーグルで検索してみてほしい。ただ演奏者がオカルティックな説明をしようとするが、それは無視しましょう)
このコンサートは床に寝転がって聞く。というのもあまりに寝る人が多いのだ。 秘密はものすごい低周波と聞こえない高周波をふくんだ圧倒的な音によると思う。メロディーがあるわけではない。ただ音の洪水の中に身をおくと人はたしかにリラックスするようだ。
アナログのオーディオ機器に根強いファンがおられるのも、こういうことではないか。
音を聞くのは耳だけではない。考えるのは脳だけではないのだ。
追記:余談ですが、バリ島のケチャックダンスは、ガムラン音楽を歌でやったらどうだということでポルトガル人主導で始まったものだ、とバリ島のミュージシャンに聞きました。
バリ島の田舎で結婚、葬儀でやる曲はガムランです。あの繊細な音は周囲の島にはないのです。