丸山ワクチン
ここ数十年話題になっていなかったが再び脚光を浴びている、「丸山ワクチン」というものがある。
がんに効く、効かないの論争期間は長かった。
私が子供のころ、ずいぶんマスコミを騒がせたものだった。(子供のころなので意味はほとんどわかっていない)
もとも丸山ワクチンは結核治療のために開発されたらしい。つまり原材料は結核菌。
ただし結核菌は毒素を作り出すので、単純にうすめても薬にはならない。
そこで丸山博士は毒素を取り除くべく研究し、作り出したのが丸山ワクチン。
たしかに皮膚結核やハンセン病に効果をあげた。
戦中、戦後の話である。
ところが丸山ワクチンを処方した患者にがん患者がいないことに丸山博士は気づいた。
そこで他の医師にも呼びかけ、がん患者に投与したら効果があった。
1966年7月。丸山博士は、「結核菌体抽出物質による悪性腫瘍の治療について」という発表をした。
マスコミが大々的に取り上げ、話題となり、処方希望者が殺到した。
1980年に丸山ワクチンは何度めかの製造認可申請をしたが認められなかった。
この時、丸山博士は77歳。
ところが厚生省「有償治験薬」という名目で丸山ワクチンの暫定的な使用だけを承認した。
この理由はおそらく、「なぜ効くのかわからない」ということにあったと思われる。
ところが2018年5月19日に、日本医大の高橋教授がメカニズムを発表した。
高橋教授によると、丸山ワクチンは、がんに対する免疫をもたらす白血球の一種の「樹状細胞」を活性化するらしい。
樹状細胞は白血球中1万分の1ほどしかない特殊な細胞で、発見されたのが1973年。
異物を攻撃するのはT細胞だが、樹状細胞は敵味方を区別する目印をつけ、T細胞に知らせる役割をもつ。
がん細胞は自己増殖を続ける一方で、樹状細胞の活動を低下させてしまう。
丸山ワクチンの素の結核菌まわりにある脂肪酸のひとつのミコール酸は樹状細胞を活性化させるのだ。
こうして、丸山ワクチンの発表から50年を超えて動作原理がわかりかけてきた。
「科学的に説明できない現象だから、そんなことはありえない」という人は多い。
しかし、現象を素直に受け入れ、そこから自然の摂理を発見することが科学だ。
ひっくり返しに考え始めたのが誰だかわからないが、それは科学教という宗教であり、科学ではない。
それが、またひとつ証明されようとしている。
丸山ワクチンは日本医科大学付属病院で細々と今も処方されている。